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大阪高等裁判所 昭和63年(う)771号 判決

本件控訴の趣意は,弁護人高木清作成の控訴趣意書記載のとおりであるから,これを引用する。

1 控訴趣意中事実誤認の主張(控訴趣意二の点)について

論旨は,被告人が原判示第一及び第二の各欺罔行為により騙取した利得はいわば各部屋の賃借権そのものと解すべきであるのに,被告人が右各部屋に入居し退去するまでの賃料等相当額を被告人の利得と認定した原判決は事実を誤認したものであり,右誤認は判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのである。

しかしながら,右各犯行における被告人の意図,犯行態様に照らすと,被告人が騙取した利得は,所論指摘のような単なる部屋の賃借権ではなく,退去するまでの賃料等相当額とみるのが相当であるから,これと同旨の原判決の判断は正当であるところ,原判決挙示の関係証拠によると原判示第一及び第二の各事実を優に認めることができ,原判決に所論の事実誤認はなく,論旨は,理由がない。

2 職権判断

次に,量刑不当の主張に対する判断に先立ち,職権を以て原判決の法令の適用の当否を検討するに,原判決は,原判示第一の各有印私文書偽造,同一括行使,詐欺の各罪について,刑法54条1項前段,後段,10条により一罪として最も重い詐欺罪の刑(ただし,短期は偽造有印私文書行使罪の刑のそれによる。)で処断するとしたうえ,同罪は原判示(累犯前科及び確定裁判)の欄掲記の確定裁判(昭和60年4月6日確定)のあった罪と同法45条後段の併合罪の関係にあるものとして,同法50条により原判示第二ないし第十の罪と別個に処断していることが明らかであるが,原判示第一の罪のうち詐欺罪は,被告人の原判示居室への入居時(昭和59年5月24日ころ)に既遂に達してはいるが,以後被告人が右居室を退去した昭和60年7月31日まで被告人は賃料を支払わず同室を不法占拠したものであるから,右詐欺罪の終了時は同日とみるべきであり,従って原判示第一の罪は前示確定裁判を経た罪と同法45条後段の併合罪の関係に立つものではないと解すべきであるのに,右の点の判断を誤った結果原判示第一の罪と同第二ないし第十の各罪とを別個に処断すべきものとし,それぞれに原判決の主文どおりの刑を言い渡した原判決には法令の適用を誤った違法があり,右誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかである。

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